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震災から1年半が経った今思うこと

 2012年8月、東日本大震災から1年半が経つ大船渡は、季節が夏だということもあり、緑が多くヒマワリやコスモスなどの花もたくさん咲いていました。昨夏は津波で流されたものがまだ町の中に多く見られたので、その頃と比べるとおだやかな景色が広がっているという印象を受けました。しかし、それは流されたものが片付けられてからほとんど手が付けられずに、そのままただ時間が経っているということを表していました。

 

 今回の震災によって被災した地域では「とにかく必要!」とされた「復旧」から、新たに「これからどうしていくのか」という「復興」の段階に移行しています。復興は、はっきりとした区切りはないにしても、今後10年はかかるのではないかと言われる長い道のりです。大船渡の方々は、今まさにその復興の道を歩いていますが、東京の大学生としてこの震災を経験した私たちも、今、同じように復興の道のりを歩き出しています。

 

 大船渡で復興していくのはそこに住む方々ですが、「私たちもそこに関わりたい」。ボランティアに参加した動機は様々でしたが、少なくともそのような思いを持った人々が集まり、これまでの活動が実現してきました。今夏の6週間の活動は、復興にかかる時間の長さからすればほんの一瞬の出来事にすぎません。しかし、私たちは確かにこの道のりの過程で大船渡を訪れ、そこに生きる方々と時間を共有しました。そしてその中で、素晴らしい出逢いに恵まれ、大船渡の良いところをたくさん教えていただきました。震災後、少し時間が経つと計画停電もなくなり、以前とほとんど変わらぬ日常を過ごしていた私たちですが、この出逢いによって、私たち自身も「復興」の第一歩を踏み出しました。そして今、これから何ができるのか、どのように関わっていくのかということを考えています。

 

人と人とのつながり

 私たちは復興支援ボランティアとして大船渡に行きますが、現地の方々と接していると、むしろ私たちが励まされ、元気をもらっています。活動の中で一緒にベンチをつくったり、草刈りをしたり。作業としては単純かもしれませんが、他愛もない会話をしながら(時には真剣なお話もしながら)そこに住む方々と「一緒にやる」ということが、日々の楽しみとなり、活動を続ける原動力になっていました。

 

人と関わることで力をもらえる。

 

 それは友達とのおしゃべりであったり、ご近所からのおすそ分けであったり、普段の生活の中にもよくあることではないでしょうか。しかし、被災して住む場所を移った方々は、これまで住んでいた地域のコミュニティが断たれてしまい、周りの人と親しく関われる環境が身近になくなってしまっている場合が多くあります。目には見えにくいけれど、生活の中に気軽な会話や助けあいがあるコミュニティがあるのとないのとでは、大きな違いがあります。そしてそれは、ひとりひとりが再び生活を築いていく力や町が復興していく力にもつながっていきます。

 

 これから復興していく「人」を支えるのは、長い目で見れば私たちボランティアではなく、これまでと同じようにそこに住む身近な人どうしです。私たちはあくまで期間限定のお手伝いであり、この先もずっとそこに住む「人」を支えられる立場にはありません。そのため私たちは、そこに住む人と人との間で「力」が育まれるようなコミュニティが形成されることを目指し、そのようなコミュニティが生まれる最初のきっかけづくりをサポートしてきました。コミュニティとは、人どうしのつながりであり、近所のおしゃべり仲間から地域の自治会まで大きさや役割は様々ですが、その中から新たな力が生まれ、時には力を合わせて進んでいく、復興に欠かせない大きな要素となります。

 

復興ってなんだろう

 時間の経過とともに必要とされるものは変わっていきます。その中で支援を継続していくことは、今後の私たちの大きな課題です。しかし、支援すること、継続すること自体が目的になってしまっては元も子もありません。なぜなら一番の目的、目指しているところは大船渡の「復興」であるからです。

では、その「復興」とは何でしょうか。

 

「大人になって、結婚して、子どもができて…そうしたらまた遊びに来なさい。」

 

 これは、この夏出逢った何人もの地元の方々がおっしゃっていた言葉です。何気ない会話の中で、何度もこのような声をかけられるうちに気付かされたことがあります。それは、復興の中で時とともに変化していくのは、被災した場所の景色、被災された方々だけではないということです。当たり前のことですが、私たちも同じように、年を重ねて変わっていきます。

 

復興が、もしも仮に10年かかるものだとしたら…

 

 そこに辿り着くときに私たちは、大人になっているし、もしかしたら結婚しているかもしれません。子どもが出来て、父親・母親になっているかもしれません。その時にもう一度、大船渡を訪れるということはどんな意味をもつのでしょうか。そこで再会するときまで、私たちはどのように生きていくのでしょうか。

 

 被災した人も、支援をした人も、そのまわりにいる人も、そこに何らかのかたちで関わりを持った人ひとりひとりが、これからそれぞれの生活の中で進んでいきます。その道のりで、私たちは少しでも大船渡とつながり続けることを大切にしたいし、大切にしてほしいと思っています。その方法は、例えば、大船渡を訪れてみることかもしれないし、大船渡の情報をチェックし続けることかもしれません。一度訪れた人ならば、自分が訪れたときの様子や経験を周りの人に伝えていくことかもしれません。

 

 私はこの言葉から「復興」とはどういうことなのか、これから自分がどのように大船渡に関わっていくのかということを少しだけ教えてもらったような気がします。しかし、復興に関わっていくこと、大船渡とつながり続けていくことに答えはありませんし、これからも考え続け、変わっていくものです。そして、その形は人それぞれだと思います。

 

10年後…

あなたは何をしているでしょうか?

大船渡はどうなっているでしょうか?

 

これを読んだあなたにも、考えてみてほしいと思います。